あれから3年

あれから3年経つ。

2月の終わり、雪の降る朝だった。
あの時娘は脳出血で昏睡状態になり、二度とお話することはなかったし、僕らと何をもっても意思疎通することができなくなった。機械がモニターするバイタルの数値さえ彼女が訴える何かを捉えることはなかった。

本当に突然のことだった。僕はうろたえ、一人でワンワン泣いた。
ついその昨日まで普通に生活し、お話しして、将来彼女が20歳になるまで頑張ろうと思っていた。彼女はその年に10歳になり、20歳までもう半分のところまできたと考えてた。それが、その日を境にお話しすることもできなくなった。これからずっと。
それが恐ろしくなった。

病院に娘が運び込まれ、人口呼吸器で心臓は動いているがもう二度と意識が戻らないという状況が分かり、とりあえず帰ろう、と車で帰ってくる道。学校の下校時間帯で、ランドセルを背負って傘をさす子供達が見えた。

帰ると妻が、
「ちいやんが帰ってこない。きっと傘がなくて帰れないんだ。学校に迎えに行ってよ!車で迎えに行けばいいじゃない!靴だって履いて行ってないよ!」
と泣きながら僕に訴えて来た。

僕は「ちいやんは、病院にいるんだ…」としか言えなかった。僕もつらかった。

仕事は手につかなくなり、会議で会社の人が話していることが頭に入らなくなった。
ちょっとした仕事をするのにも精神的に大きな力が必要になった。

その二年後に娘は病院で息を引き取った。
なんだか、ほっとした気持ちもあった。これで終わった。これからは残った僕たちの将来に目を向けよう。
でも、悲しみやくよくよ、普通じゃない気持ちが、たまに出てくる。

今でも、時折泣きたくなる時がある。思いっきり泣いて、この悲しみが吐き出せるなら楽になれるだろうけど、実際泣けないんだ。

僕は、娘の死を理由に、現実から逃げようとしているんじゃないかと思うこともある。
死んだ娘に会う方法を試した事もある。でも会えなかった。もしかしたらもうどこかで他の魂として生き返っているのかも、とか思う。

今では、なんとか仕事に行けるようになった。
仕事に集中できるようになったとは思う。

あっという間だったような、とても長かったような、時間の流れが止まっていたのではないかと思う。まるで夢を見ていたような気がして、今この瞬間も夢じゃないかと感じる。

では

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